ギター独学の限界はどこにある?つまずきやすいポイント
こんにちは、兵庫県姫路市の音楽教室「music salon”Moon²”」です。
ギターの独学に限界を感じている方に向けた記事です。
「独学でずっとやってきたけど、これで合っているのか不安」
「YouTubeやネットの教材で練習しているのに、なかなか上達を感じられない」
「独学ギタリストの多くが挫折する、という話を見て少し不安になった」
そんな方に向けて、独学のどこに限界が出やすいのか、当教室の現場での実感をお伝えします。
「独学は9割挫折する」と言われますが、限界の中身は分かりにくいものです
ギターの独学について検索すると、「独学ギタリストの9割は1年以内に挫折する」といった数字を見かけることがあります。ただ、当教室が確認した範囲では、こうした数字に出典は示されていませんでした。当教室でもこの割合を検証したことはありません。
数字そのものより大事なのは、具体的に何でつまずくのかだと思います。ここからは、当教室に独学から来られた方の傾向をお伝えします。
独学でつまずきやすいポイント
当教室に独学から来られる方には、フォームに関わる部分でつまずいているケースが挙げられます。具体的には、次のようなところです。
- 正しいフォームを身につけていないために、見た目が不自然になっている
- そのフォームの崩れが原因で、運指(どの指でどこを押さえるか)が乱れている
- リズムを意識した練習ができておらず、基礎である表拍が取れていない
- オルタネイトピッキング(ピックを下向き・上向きに交互に動かす弾き方)を理解できていない
- 弦のミュート(鳴らしたくない弦の音を止めること)ができていない
- ピックの握り方が定まっていない
- ギターの構え方にはいくつかの型があり、それぞれのメリット・デメリットや使い分けができていない
- 自分が目指す音が頭の中でイメージできていないために、音作りがうまくいかない
- カポ(弦を押さえて簡単にキーを変えられる器具)の原理を理解していない
- ギターという楽器の構造そのものを理解していない
このうち、実際によく見かけるのはオルタネイトピッキング・弦のミュート・運指の3つです。
フォームと運指
正しいフォームを知らないまま練習を続けると、運指も乱れたまま進んでしまいます。独学の場合、自分のフォームを教室の講師のように横から見てもらう機会がないまま練習を続けることになりがちです。
リズムと弾き方の基礎
表拍が取れていない、オルタネイトピッキングが身についていない、弦のミュートができていない。これらは、独学でよく見かけるつまずきです。
「量をこなしているのに質が伴わない」という遠回り
もう一つ、独学でよくある遠回りがあります。練習に取り組んではいるのに、中身が伴っていないケースです。
- クロマチックトレーニングやスケール練習を、特に意識せずにただ繰り返してしまい、左右の手のタイミングが合わない
- 曲を弾くことだけに意識が向いてしまい、リズム・フォーム・音のトーンが崩れたまま進んでしまう
練習量を増やせば上達するのか、という点については、楽器演奏を対象にした研究でも意見が分かれています。
13研究・788人の分析
2014年に発表された、楽器演奏を対象にした13の研究・のべ788人分をまとめた分析では、積み重ねた練習量と、客観的に測定された演奏の到達度のあいだに強い相関が報告されています(Platz, Kopiez, Lehmann, & Wolf, 2014)。ただし相関であって因果ではなく、「練習したから上達した」のか「もともと伸びる人がより多く練習した」のかは区別できません。対象の多くは音楽を専攻する学生・演奏家で、趣味で週1回レッスンに通うような成人初心者を対象にした研究ではありません。
バイオリン専攻生39名の再現実験
一方、2019年に発表された、バイオリンを専攻する学生39名を対象にした研究では、18歳までにひとりで積み上げた練習時間が、最上位群(平均8,224時間)で中位群(平均9,844時間)を下回っていました。統計的に意味のある差はなく、むしろ最上位群のほうが少なかったということです(Macnamara & Maitra, 2019)。ただし中位群と下位群のあいだにはきれいに差が出ており、練習量そのものが無意味というわけではありません。差が消えたのは、あくまで上位層どうしの比較でのことです。
この2本はどちらもピアノやバイオリンが対象で、ギターそのものを検証したものではありません。それでも、練習量そのものより中身が大事、という方向性は、当教室で独学から来られた方を見ていても感じるところです。より詳しくは練習量と上達についてまとめた記事で紹介しています。
自分で気づく力を大切にしています
当教室の実感として、独学を続けて上達する人には共通点があります。それは、自分の今の状態や変化を客観的に確認し、問題点を挙げられること、そしてその解決方法を自分で見つけられることです。逆に、これが苦手な方は独学で伸び悩みやすい傾向があります。
「センスがあるかどうか」という言い方をされることもありますが、これは生まれつきの才能というより、自分の現状を客観視し、問題を見つけ、解決策を考える力、つまり自己診断力に近いものだと考えています。
写真や動画を撮って、まず自分で考える
この力を大切にする指導として、当教室では、自分の演奏を写真や動画に撮ってもらい、まず自分で考えてもらうということをしています。人から答えを教わる前に、自分の姿を記録に残して見返し、どこがどうなっているのかを自分の目で確認してもらう、というやり方です。
独学の方も、この方法は自分で取り入れられます。
自分の手応えと、外から見た評価がズレることもあります
ここで一つ、正直にお伝えしておきたい研究があります。2025年に発表された、上級のピアノ学生25名を対象にした実験です。演奏を自動で再生できる特殊なピアノを使い、自分の演奏の再生を聴いたグループは、そのあとの演奏を自分では「良くなった」と評価しました。ところが、プロのピアニスト12名による評価や、演奏を記録した客観的な指標では、聴く前と後で違いは確認されませんでした(Nusseck, Wild, Sischka, & Spahn, 2025)。
この実験は各グループ8〜9名という小規模なもので、著者ら自身が最大の限界として挙げています。差が確認されなかったのは、実際に差がなかったのか、人数が少なくて検出できなかったのかは区別できません。1回・約30分の観察にすぎず、対象もピアノです。自動演奏ピアノでの再生という特殊な条件で行われており、ギターや、写真・動画を使った振り返り、一般的な録音を聴く行為そのものを検証したものでもありません。
それでも、「見返して手応えを感じること」と「実際に良くなっていること」は、別に動くことがあるという報告は、覚えておいて損はないと思います。撮って見返すこと自体をやめる理由にはなりませんが、それだけで上達したと決めつけすぎないことも大切です。
結局どうすればいいか
- 「独学ギタリストの9割が挫折する」といった数字に振り回される必要はありません。出典のない数字は、鵜呑みにしないほうが安全です
- オルタネイトピッキング・弦のミュート・運指は、独学でつまずきやすいポイントとして特に意識してみてください
- 自分の演奏を写真や動画に撮って見返すのは、当教室のレッスンでも実際に使っている方法です。ただし、それだけで上達したと判断しすぎないことも大切です
- 上達の速さやつまずき方には個人差があります。ここで紹介した内容がそのまま誰にでも当てはまるとは限りません
さいごに
独学が悪いわけではありません。ただ、フォームや音の作り方など、自分では気づきにくい部分があるのも事実です。
「独学でここまでやってきたけど、正しいかどうか分からない」という方は、体験レッスンで一度、現状のフォームを見てもらうのも一つの方法です。
参考文献
Platz, F., Kopiez, R., Lehmann, A. C., & Wolf, A. (2014). The influence of deliberate practice on musical achievement: a meta-analysis. Frontiers in Psychology, 5, 646. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2014.00646
Macnamara, B. N., & Maitra, M. (2019). The role of deliberate practice in expert performance: revisiting Ericsson, Krampe & Tesch-Römer (1993). Royal Society Open Science, 6(8), 190327. https://doi.org/10.1098/rsos.190327
Nusseck, M., Wild, F., Sischka, C., & Spahn, C. (2025). Effects of audio feedback interventions with the Disklavier on the performance of piano students. Frontiers in Psychology, 16, 1568021. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1568021
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